かめの速さで。
親方をはなれ一人で仕事をはじめてから、二年がたっていました。
まだまだ、十分仕事があるかというほどではありません、仲間の仕事を手伝いにいったり、はたまた、ぜんぜん違う仕事を手伝ったりといろいろな仕事をしている毎日です。
それでもご近所の仕事がずい分増えました、我が家の前の通りをあらためて見てみると嬉しくなります。
庭の仕事をしていて、いい庭とはどんな庭だろう、僕はどんな庭がつくりたいんだろう、はたまた僕自身どんな庭に住みたいんだろうと、いろいろ考えます。
そんな中、僕が育った実家の土地に以前住んでいたと言うお婆さんの家に仕事に行きました。
そんな事情はまったく知らずに話しをしていると、どうも同じ町内だ、さらに同じ土地だと言うことがわかり、お互いにびっくり。
お隣のお家にお風呂を入らせてもらったこと、僕のお婆さん姉妹とよく遊んだこと、向かいの家の火事でもらい火をして燃えてしまったこと、たくさん昔話が聞けてとてもうれしい時間でした。
そして、たまたまその仕事が自分の結婚式の前でした。
何でも器用にこなすお婆さんは、庭に咲く八重桜を上手に塩漬けにしてあり、それを頂いて式に桜茶として使うことができてとても嬉しかった。
お婆さんの庭は雑誌やテレビに出てくるような立派な庭とは違います。
けれど近所の人が榊を貰いにきたり、花見をしにきたり、梅干、野草茶を作ったりと、お婆さんは楽しそうです。
縁側で休憩をしながら庭をながめて思いました、「こういう庭に住みたいな~」
立派な庭石や、庭木があったり、凝った技巧の庭だったりだけが、いい庭ではないと思います、素朴でやさしい庭を造っていけたら嬉しいです。